黄金のラドゥール
はたからみれば恋人同士のじゃれ合いのようにしか見えない。だがガインは感心せずにはいられなかった。
『皇子がこんな眼差しをされるとは!
「警護のため」とはおっしゃるが、常に冷静沈着、社交の場でも女性に見向きもせず私に任せきりだったあの皇子が!
ハル様には、こんなに優しい眼差しをされるとは、、』



青い瞳が悪戯っぽく光る。
「では噂を本当にしてくれると助かるのだがな。」

「どういうこと?」
ハルの眉が八の字に寄った。


「言葉通りだ。助かる。」
コウジュンはふっと微笑んだ。

「今は警護が手薄だ。
私の手の届くところに居た方が安全だ。」
逞しい腕がぐいっとハルの腰を抱いた。
また抱えられそうになる。

「手じゃなくて、目の届くところじゃないの?寵愛の娘だったら、、近くに居られるから助かるってこと?」
ふわっと足元が浮かび上がった。
「きゃぁ!」

「口を閉じないと舌を噛む。」

ハルはただもう落ちないようしがみつくので精一杯だった。
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