沢山の初めて
必死にすがる目の前のこの人は、本当に(元になるはずだった)旦那様かしら?

もう一度だけ信じてみてもいいのでしょうか。

一生懸命なこの顔は可愛いとは思いますが。

『……わかりました。帰りましょうか。』

「本当か?!やった!すぐ連れて帰る。」

私を抱き締めたまま、子供みたいにはしゃぐ旦那様。

満面の笑みを初めて見ました。

思わず私もつられて笑顔になりました。

「雛菊笑った。可愛い過ぎる!」

これからも沢山の初めてを見せて、見せられて、幸せになりましょうね。

『さっ、家に帰りましょう、零(れい)。』

あら?

旦那様、固まってます。

じっと顔を見ていると、だんだん耳まで赤くなってきて…。

「名前っ!」

はい、初めて呼びました。

本当の夫婦になるまでは呼びたくなかった…私のただの意地ですね。

「もう一回呼んでくれ!」

『零、好きですよ。』

「オプションついたー!そっちの方が嬉しい…死ぬ。」

あらあら。踞ってしまいました。



< 7 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop