嘘つきな恋人
10月大安。

結婚式の前に慌しくタクシーに乗って区役所に行き、
私は三島美鈴という名前になった。

今日はお天気に恵まれ、青い穏やかな海にも祝福されたみたいだ。

私はマーメイドスタイルの真っ白いレースに覆われたドレスを身にまとい、
長いベール被って、真っ白い生花のバラをあしらった髪飾りを付け、
控え室に1人で結婚式の始まる時間を待っている。

両親も、裕人さんもお客様や、親族とに挨拶に忙しいようだ。

裕人さんに話があったのに…
ここ数日は、結婚式の最後の確認に忙しく、珍しくゆっくり話す時間がとれなかった。
…式の前には会えそうにないな。とため息を吐いていると、
裕人さんがヒョイと控え室を覗き、そうっと入ってドアを閉めて、鍵をかけた。

「やっとゆっくり花嫁を見れる。
ジンクスでは式の前に新郎は花嫁に会ってはいけないらしいけど、我慢できないよな。
誰にも見つからないように鍵をかけとかないと…」

と私に悪戯っぽい笑みをみせ、

「とっても綺麗だよ。奥さん。」と私の頬を撫でる。

裕人さんはグレーのタキシードを身につけ、今日はさらに王子に見える。

トントンとノックの音がするけれど、
シーと裕人さんが指をたてる。今のうちに言わなければと思って、

「裕人さん…私…言ってないことが」と真面目な顔をすると、

「マジか?秘密は俺の専売特許だと思ってたのに…」と唖然とした顔をする。

「あ、あの、タイミングを逃してて…でも、言わないわけには…って…」

「ちょっと待て。深呼吸するから。
…どんな美鈴も愛すると決めてるんだ…。」と何度か深呼吸を繰り返す。

その間もノックの音がするけれど、裕人さんはすっかり無視する事に決めたようだ。


そんなに大げさな事じゃない。
言わなくてもそのうちわかる事だけど….

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