嘘つきな恋人
店から出ようとすると
「先生、新しい彼女ぉ?」と店員の女の子が声をかけてくる。

せんせい?

「いま、頑張ってるんだから、みんなに言うなよ。」
と三島さんは手を振って答えて、
その手で私の手を掴んで、そのままで店を出た。

昨日はあんな事をしといて、
今更、手を振り払うのもどうかと思って大人しく手を引かれながら、

「先生って?」と顔をしかめると、

「いろんな先生がいると思うけど…医師はもう嫌?」と聞くので、

私はため息をつき、

「もう、付き合いたくないかな。3年頑張ったし…」

と言うと、三島さんはくすんと笑い、

「ふうん。
大丈夫だよ。…俺って高校の教師だから…」

「学校の先生?」

「物理の教師。生徒に人気なんだ。」

「さっきのも生徒さん?」

「そう。」と私の手をキュッと握る。

「離してください。」と眉間に皺を寄せると、

「また、あの店で会える?」と聞くので、

「…どうかな?…一緒にいたドラゴンの奥さんは私の看護師の先輩だったので…月に2.3回顔を出してるけど…会った事ないですよね。」
と、考えながら返事をし、
こんな王子に店で会ったら、きっと覚えてるよね。
…出来れば会わなくても良い。とちょっと思う。

「大丈夫。すぐに会えるよ。
ちゃんと男と別れてきてね。」と私の手を離して手を振る。

…すぐに会っても気まずいじゃん

私は大きくため息をついて、手を振り返して駅のホームに入った。
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