嘘つきな恋人
真っ直ぐ私達の席にやって来て、

「君は俺の恋人になんで勝手に会っているんだ?」

としおりちゃんを冷たい視線で見る。

「先生、美鈴さんは先生と別れるって言っていました。」

としおりちゃんは必死の顔で剛を見上げている。

「俺は別れるつもりはない。」と私の顔を見る。


ドラゴンがやって来て、
「久しぶりですね。後藤先生。
ここは予約席なんで、勝手に座られても困るなあ。」
と凄みのある笑顔を見せ、剛の肩を掴み、奥の個室に連れて行く。

さすがこういうお店を続けているだけあって、頼りになる。
時にはお酒を飲みすぎてトラブルを起こす輩(やから)もいるのだろう。

「俺は美鈴に話がある。」と言いながら、連れていかれている剛は

「せんせー、その怖い顔が治ったら、会わせるよ。
そんな顔じゃ、美鈴ちゃんにもっと嫌われる。」と年上のドラゴンに言われ、渋々従っている。



「…別れないって言われても…
私の中ではもう、終わったのよ。」と私が呟くと、

「…もう、名前も呼んでもらえないのかな…」

としおりちゃんがテーブルに突っ伏して低く泣き声を出した。


あの男。

絶対に許さない。

と心に誓って、ジュースををゴクゴク飲んだ。
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