嘘つきな恋人
「私ね。前の騒ぎの時、自分で許したつもりになってたけど、
いつかまた同じ事があるってどこかで思ってた。
だからね、しおりちゃんの事を知った時、
ああ、やっぱり。って
思ったんだ。
剛のことをちっとも信じて付き合ってこなかっんだなって自分が嫌になった。
剛は私だけでは足りないんだってずっと思ってた。
だからね、もうおしまいにしたい。
こんな風に付き合っても、幸せじゃない。」と言うと、

そうか。と肩を落とし、

「俺は馬鹿だな。
美鈴がそんな風に思ってるって事にも気がつかなかった。
でも、俺は美鈴との将来を考えてたよ。」と言って、

「…もうしばらく、すっかり離れるのは待ってくれないか?
俺は美鈴のいない生活を全く考えてなかったから、
まだ、どうしたら良いのかわからないんだ。
キスもSEXもしなくていい。
いや、美鈴が気が向いたらしてくれていいんだけど…
友達って感じでどうだろう。」と私の顔を真剣に見る。

はい?
なんだそれは…

私は呆れた顔で剛の顔をみる。
剛は大真面目な顔つきだ。

…でも、
剛の存在が急になくなって、
どうしたらいいかわからない
喪失感は私も一緒だ。

私が恋人としての剛を信じられなくなっただけで一緒にいるときの剛は私をよく笑わせてくれて、
大切にしてくれてた。

…他の女にもそうだったとしても…

一人前の医師になるために勉強や研修に明け暮れていたこの人は
恋愛に慣れていなくて、
いつも不器用に全力で私にぶつかってきてくれた。
そこが好きになったポイントでもあったんだけどねえ


きっと、こんな事になったのも、
恋愛って長く付き合っても、
真剣に取り組まないと
あっという間に、関係が崩れていくって
わかっていなかったせいかもしれない。



「…Dragonでご飯。ならいいかな。
割り勘。二次会やベッドもなし。」と私が機嫌の悪い声で言うと、

「…ホントに?」と嬉しそうに笑って、

「よろしくお願いします。」と深く頭を下げた。

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