嘘つきな恋人
手を洗った裕人さんは、キッチンで、揚げたての唐揚げをつまみ食いをする。

「美味い。リンは天才だ。」と冷蔵庫から缶ビールを取り出して、飲み出した。

「こら。ここで食事にするつもりですか?
…レモンが野菜室に入ってるんですけど…」と言うと、レモンを取り出すので、少しため息をついてから、櫛形に切ると、レモンを唐揚げの上に絞って口に入れ、

「うーん。美味い。」と自分の口に入れてから、私の口にも唐揚げを入れる。

私は熱い唐揚げを食べながら、

「揚げたては美味しいですね。」とちょっと笑い、

「もうすぐおしまいです。
揚げてある唐揚げを盛り付けてください。」とお皿を取り出すと、
裕人さんはもう1つ唐揚げを口に入れたから、菜箸で、唐揚げを盛り付ける。

「しょうがない人だな。」

と笑いながら、唐揚げをあげると突然パンッと皮がはじけたようで、油がはねた。

「熱っ!」と言うと、

「美鈴!」と慌ててキッチンに入った裕人さんが有無を言わせず、
私の腕を握り赤くなった部分に水をザーザーかけた。

えっと、…大丈夫だけど…そんなに慌てなくても…

「か、唐揚げ焦げる。」と私が言うと、

「俺がやるから、冷やしとけ。」と言って恐る恐る揚げ物の鍋の前に立っている。

なんだか可愛らしい。

「もう、揚がっていると思います。火を止めて、上げてください。」
と言うと、火を止めてからゆっくり唐揚げを摘んで慎重に油から取り出した。
手早くしないと、焦げるんですが…と思ったけど、
お任せしておこう。

私は料理になれていない様子の裕人さんを微笑ましく見た。

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