嘘つきな恋人
裕人さんは美味しいと夕飯を食べ、

「美味くて食べ過ぎた。」とソファーで横になっている。

「大丈夫?胃薬飲む?」と聞くと、

「すぐに動けるようになるよ。片付け手伝うつもりだったのに…
ゴメン。…唐揚げも、きんぴらごぼうも味噌汁もみんな美味くて…
料理を作る女の子と付き合って来なかったからなあ。
俺はリンにすぐに胃袋を掴まれそうだ。」とクスクス笑っている。

「いや、普通ですよ。」と言いながらもちょっと嬉しい。

私が片付けてる間に裕人さんは眠ってしまったみたいだ。

食器を片付けて、ソファーを覗くと、気持ちよさそうに眠っている。

背の高い裕人さんは、2人がけのソファーでは膝から下がまるきり出ているけれど…。

私はそうっと薄い毛布をかけておく。

疲れてるよね。

2日前はほとんど寝てないし…と寝顔を見つめると、

突然電話の着信音が鳴り響く。

結構な音量。

裕人さんはパッと目覚めて、ポケットからスマホを取り出し、

「はい。三島です。どうした?」と耳に当てながら、私に微笑みかけ、

リビングのガラス戸を開けて、ベランダに出て、戸を閉める。


…私には聞かれたくない話かな?

生徒さんなら…個人情報を守るってことか…

案外きちんとしてるのかも…

と思いながら、

コーヒー飲むかな?と思って、ケトルにお水を入れていると、

「リン、ちょっと出かけてくるよ。
1時間ぐらいで戻るから俺の部屋に泊まる用意して待ってて。」

と微笑んで、上着を持つ。

「無理して戻って来なくっても良いよ。生徒さん?」と聞くと、

「うん。ちょっと問題があるんだ。
でも、俺はリンと一緒にいたいから、絶対ここに戻ってくる。
だから待ってて。」

と私をギュッと抱きしめ、チュッと音を立ててこめかみに唇を付けて、

玄関を出て行った。
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