嘘つきな恋人
12時近くになって電話がある。

「ゴメン。寝てなかった?今からタクシーで迎えに行くから、マンションの下にいて。マンションの中にいてよ。遅い時間だから…」と言って電話を切った。

オトナなんだから、そんなに心配しなくても…と思って少し笑える。

ついこの間までは1人で夜中も歩いていたのに…
裕人さんと一緒にいるようになったら、途端に甘やかされている。
オンナノコ扱いがくすぐったくてちょっと嬉しいと思う。

部屋の戸締りをして、荷物を持ってマンションの下に入りると、
すぐに、タクシーがやってきた。


裕人さんが迎に出てくる。

「リン、遅くなってゴメン。」

「教師ってこんなに遅くまで生徒さんの事で仕事があるんですね。」

「まあね。
でも、俺にできることだけをするだけだよ。
なんでも出来るわけじゃない…
さて、これからは大人の時間。夜はこれからだよね。」と私に微笑みかける。

「もう、寝る時間ですよ。」と言うと、

「リン、朝からするの?俺は良いけど。」と私の耳に唇を付けて小さな声で言う。

「…エッチ。」と声を出さずに呟くと、

「まあ、男はみんなエッチって決まってるよね。」と私の顔を見てくすんと笑った。


私はタクシーに顔を赤くして乗り込む。

隣に乗り込んだ裕人さんは

「リン、顔が赤い。熱でもあるのかなあ。」

と笑った顔で私のおでこに手を当てる。

…絶対にからかって面白がってる。

「ありません!」と言うと、

「りん、急にそんなに大声を出すと、運転手さんがびっくりするよ。」

とまた、くすんと笑う。

大声を出させたのは裕人さんでしょう。

と私は怒った顔で暗い窓の外を睨む。



「月が綺麗だよ。」と裕人さんは窓の外を指差す。

「もうすぐ満月でしょうか?」と私も空を見ると、

私の身体に腕を回し、

「きっと、部屋の窓からも見える。」と耳元で囁いて私に微笑みかけた。

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