嘘つきな恋人
タクシーで裕人さんのマンションに寄ってみたけれど、
やっぱり裕人さんは部屋にいないみたいだ。

(私の勤務が不規則なので、お互いの部屋の鍵はもっているけど、勝手に部屋に入っていることはない。裕人さんはリンがいない部屋に行ってもしょうがない。と私が部屋にいる時にしかやって来ないし…)

暗い部屋の玄関で佇む。
まるで、ストーカーみたいだと自分を笑う。

馬鹿みたいだ。

こんなに取り乱して、

ヒトには誰でも、隠しておきたいこともあるのに…

その秘密を知ることになった時、どうするのかはその時考えればいい事だけど、

いま、私は知らずに済ませる事は出来なさそうだ。

気付いてしまったから…。

彼と連絡が取れない夜がある。

それは事実。

ため息とともに、待たせておいたタクシーに乗り、自分のマンションに帰った。

私は部屋に入って、頭からシャワーを浴び、

なんども連絡来ていないかとスマホを覗き、眠れない夜を過ごした。
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