嘘つきな恋人
裕人さんのマンションに車が停められ、
ゆっくり手を引かれて部屋に入る。
「とりあえず、鍵の閉まった部屋を見てくれる?」と裕人さんが決心したように言う。
今まで私に言えなかった事を話そうとしている。
どんな事実にも目を背けないでいよう…
と私は緊張して部屋の前に立つ。
裕人さんがドアの鍵を開けると、
書斎のような部屋が現れた。
窓辺に置かれた大きな机にパソコン。
壁いっぱいの本棚。
特に変わったところはない気がする。
私が裕人さんの顔を見上げると、
裕人さんはため息をついて、本棚を指差す。
なに?
医学書?
麻酔科の雑誌?
「え?」
「ごめん、美鈴、俺は高校の教師じゃない。」
と裕人さんは深々と頭を下げた。
「…麻酔科の医師?」
「勤めているって言った高校の後ろにある、潮騒療養所いわゆるホスピスの麻酔科医だよ。」
とため息をついて私を見つめている。
「嘘って…それ?」
「そう。連絡が取れない時があったり、夜中に出かけたのは勤務や呼び出し。
美鈴に知られたくなくて、バレないように色々と嘘を付いてた。
付き合うようになったら、隠し通せないってわかってたのに…
言い出せなくて…本当にごめん。」
「…私に愛してるって言ったのは?」
「嘘の訳ないだろ。」
「昨日の女の人の声は?」
「勤務中に恋人とデートの約束しようとしてたから邪魔された。」
「私の他に付き合ってる人じゃない…の?」
「そんな訳ないだろ。俺は美鈴にゾッコンなんだから…」
「…なんでそんな嘘を?…」
「うー。やっぱり覚えてない?
『医師とは付き合いたくない』って。
美鈴が言ったんだぜ。」
と裕人さんは大きく息を吐き出す。
「う…嘘。」
「嘘じゃあねーよ。」とプッと吹き出し、
「美鈴の嘘つき。」と裕人さんがゲラゲラ笑い出した。
ゆっくり手を引かれて部屋に入る。
「とりあえず、鍵の閉まった部屋を見てくれる?」と裕人さんが決心したように言う。
今まで私に言えなかった事を話そうとしている。
どんな事実にも目を背けないでいよう…
と私は緊張して部屋の前に立つ。
裕人さんがドアの鍵を開けると、
書斎のような部屋が現れた。
窓辺に置かれた大きな机にパソコン。
壁いっぱいの本棚。
特に変わったところはない気がする。
私が裕人さんの顔を見上げると、
裕人さんはため息をついて、本棚を指差す。
なに?
医学書?
麻酔科の雑誌?
「え?」
「ごめん、美鈴、俺は高校の教師じゃない。」
と裕人さんは深々と頭を下げた。
「…麻酔科の医師?」
「勤めているって言った高校の後ろにある、潮騒療養所いわゆるホスピスの麻酔科医だよ。」
とため息をついて私を見つめている。
「嘘って…それ?」
「そう。連絡が取れない時があったり、夜中に出かけたのは勤務や呼び出し。
美鈴に知られたくなくて、バレないように色々と嘘を付いてた。
付き合うようになったら、隠し通せないってわかってたのに…
言い出せなくて…本当にごめん。」
「…私に愛してるって言ったのは?」
「嘘の訳ないだろ。」
「昨日の女の人の声は?」
「勤務中に恋人とデートの約束しようとしてたから邪魔された。」
「私の他に付き合ってる人じゃない…の?」
「そんな訳ないだろ。俺は美鈴にゾッコンなんだから…」
「…なんでそんな嘘を?…」
「うー。やっぱり覚えてない?
『医師とは付き合いたくない』って。
美鈴が言ったんだぜ。」
と裕人さんは大きく息を吐き出す。
「う…嘘。」
「嘘じゃあねーよ。」とプッと吹き出し、
「美鈴の嘘つき。」と裕人さんがゲラゲラ笑い出した。