嘘つきな恋人
「裕人の嘘つき。」

「美鈴の嘘つき。」

と言いあいながら、私達は唇を重ね、固く抱き合った。



嬉しくて涙が出る。

嘘を付かれていたけど、

私を愛しているのは嘘じゃない。


「これで、隠し事は無くなってスッキリしたな。」
と言いながら、裕人さんは私を抱き上げ、ベッドに運ぶ。

「この1年近くずっと嘘をついてたんだ。」と私が上目使いで見上げると、

「嘘を付かせたのは美鈴だろ。
付き合う前から、医師だったら付き合わないって、
『職業に貴賎はない』って言葉をしらないのか?
まったく、俺を知ってから断れよ。って話だろ。
…まあ、断らせるつもりはなかったけどね。
俺は出会った時からものすごく美鈴が気なって、
放って置けなくて、
美鈴を知るたびにどんどん好きになっていったから
絶対に恋人にするって思ってたし。」

と言いながら、どんどん服を脱がせていく。

えー、嘘は私のせい?

と口に出したかったのに、唇は唇で塞がれ、

激しいくちづけで息もできなくなる。


「美鈴、結婚して。」とうなじに舌を這わせながら裕人さんは笑った声を出す。

「…本気ですか?」

と驚いて目を開けると、いつもの優しい茶色い瞳が私をまっすぐに見つめている。

「…嘘じゃあないよね。」と確認すると、

「もう、嘘は必要ない。」と言ったので、

「…結婚します。」と見つめると、

「よし!」と大きな笑顔を見せて私の唇を再び塞いだ。

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