嘘つきな恋人
「こんばんわ。」

とドアを開けてやってきたのは
麦さんと12月に産まれたばかりの女のコの波瑠(はる)ちゃんとご主人の芦沢先生だ。
芦沢先生は背が高く細身で、背格好は裕人さんににているけど、
サラリとした短い黒髪に銀縁眼鏡で、口を真っ直ぐにひき結んでいるような、見るからに真面目。ということがわかる人だ。
(こういう人が麦ちゃん先輩の前だけで甘い笑顔を見せる。って
病棟ではギャップ萌えと言われていた。)

まあ、裕人さんのチャラい、いつもニコニコしている男とはまるで違う。かな。

「きゃー。麦ちゃん先輩。お久しぶりです。
波瑠(はる)ちゃん相変わらずかわいいー。」
と私がはしゃいで駆け寄って、つぶらな瞳に笑いかけていると、


裕人さんと芦沢先生が挨拶している。

「お久しぶりです。」と裕人さんが言ったので、

「え?…知りあい」と驚くと、

「まあ、医院を手伝うことになった時、療養所の院長にもあいさつにいったよね。
そこで会っってるし、年末の医師会の集まりにも院長と来てたしね。」

と芦沢先生があっさり言うので、ドラゴン夫妻に麦ちゃん先輩も驚いた声を出す。

「ええ?私は美鈴ちゃんの恋人が教師だってあなたに言ったじゃない?!」
と麦ちゃん先輩が芦沢先生に言う。

「そう。花火大会の時に聞いたけど、
この人がナイショにして欲しいって言うから…」と芦沢先生は裕人さんを指差す。

「い、いや、だって自分で言わないとって思うじゃん。」と裕人さんが慌てた声を出して私の顔を見る。。

「まあ、美鈴ちゃんの事を真剣に考えてるって言うから、見逃しといた。」と芦沢先生は涼しい笑顔を見せる。
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