【完】こちら王宮学園ロイヤル部



分かったって、何が……?

そもそも尾行すると言い出したのは、少なからずロイヤル部の中に彼女に好意を抱いている人がいるからのはずで。



「俺今日予定なかったから、ちょいと暇つぶしに付き合って欲しかったんだよ〜。

モールの中にあるケーキ屋で、いっちゃんたちにお土産買って帰ろ」



「……本当にもういいんですか?」



「ん〜、なんとなく、だけど。

姫はあの男と付き合わないような気がする」



付き合わないような気がする、って……

あの距離感だったのに?とか、思うことは色々あるけれど。椛先輩の表情を見て、これ以上聞いても教えてくれないだろうと素直にそれに従った。



「……この間、

俺が南々先輩を屋上に案内したの覚えてます?」



今日は日曜日だから、モール内は家族連れが多い。

水着やビーチグッズ、浴衣なんかが展開されているのを見て、夏だなとぼんやり思う。




「頑なに姫とふたりで行こうとするから、

夕さんがやましいことでもするんじゃないかって言ってたぞ〜」



「……そんなつもりはないです。

ルアの話を、南々先輩としたかったんですよ」



あの部屋にいると、ふたりになる機会はほとんどない。

だからルアが部屋に出てきた日以来、彼女とふたりになるタイミングをずっと探していた。それがあまりにもなかったから、屋上に連れ出すという強引な手に出た。



「……ちゃんと、お礼言えてなかったので」



あの日。熱を出して部屋に閉じ込められている状態だったから、まさか南々先輩がルアの方に行ったなんて知らなくて。

ようやく熱が下がってきたタイミングで莉央さんに「ルアは大丈夫ですか?」って尋ねたら、南々先輩が見てると言うからさすがに驚いた。



様子を見に行かせてくださいと言ったら莉央さんには「体調もどってから言え」と言われるし。

攻防しているうちにC棟にいなかったらしい3人が用事を済ませて部屋に訪れて、椛先輩のお許しが出たからルアの元に行ったんだけど。



塞ぎ込んでしまったルアの心を変えてくれたのは、南々先輩だから。

それについてのお礼を、きちんと言っておきたかった。



< 159 / 655 >

この作品をシェア

pagetop