【完】こちら王宮学園ロイヤル部
・女王様が生まれた理由
◆ Side夕帆
「ちょっ、あんた何してんの……!」
ハッと。我に返って、加減もせずに弟の腕を引く。
そうすれば案の定不機嫌そうに睨まれたけど、それより大事なのはこのクソガキの行動だ。
「なにって、キスだけど?」
「んなこと言われなくてもわかるわ……!」
「いいじゃん別に。
誰かがナナと付き合ってるって言うなら謝るぐらいはするけど、ナナのこと好きとか見る目ないよね。ほかにかわいい子いくらでもいるし」
悪びれもしないこいつの顔を引っ叩いていいだろうか。
っていうか、"見る目ない"って。
そう言ってる自分が南々瀬ちゃんのこと好きなくせに。
……いや、こいつの面倒なプライドがそういう言い回しをさせてるだけか。
「……2つ年上の美人捕まえたら、そりゃあほかの男よりマセるわな〜。
このエロガキ。たぶらかしてんじゃねえよ」
「うーわ、
人妻漁りしてる椛に言われたくないんだけど」
「はは、すっげえ殺意湧いた」
「椛先輩。瑠璃と翡翠の教育に悪い発言するのはやめてもらっていいですか」
「るーちゃんたまに俺に冷たいの何なの?」
……こいつらはもう知らねえ。放っとく。
その肝心のお姫様は、と南々瀬ちゃんに視線を向けたら、ルアが何かを優しく話しかけていた。うん、唯一の癒しだな。
「……なあ、夕帆」