【完】こちら王宮学園ロイヤル部
こそっと。
莉央に名前を呼ばれて、「ん?」と聞き返せば、なにやら目で訴えてくる。何かとそっちに視線を向ければ、黒いオーラを放ついつみ。
……すげえ怒ってんじゃねえか。
何が怖いって、あのどす黒いオーラを放つだけ放って、何も言わないことだ。無言が一番怖い。これ怒りに関する鉄則な。
「……つーかお前、
なんで仲悪いのに夕陽連れてきたんだよ」
「夕陽が偶然こっちの家来てたんだよ。
腹減ったから昼飯奢れってうるせえし連れてきた」
自分のほうが稼いでんだからむしろ兄貴に奢れよ。
南々瀬ちゃんはあんまりアイドルに興味なさそうだけどさすがにNANAが現れたらおどろくかな、と面白がって連れてきたのに、まさかの元カノ。
「……とりあえず、ごはんたべない?」
そう言って場を和ませてくれたのはルアで、ルアがいなかったらこの場はいろんな意味で修羅場と化していたと思う。
南々瀬ちゃんが気づいてないだけでいつみは彼女のことが好きだし、それにたぶん、ルノ、も。
「そうだね。
すぐに支度してもらうので、少し行ってきますね」
「あ、ルノくんまって。俺も行く」
ルノと、呉羽が部屋を出ていく。
そこでようやく南々瀬ちゃんに「大丈夫?」と声をかければ、彼女は困ったように笑って「はい」とうなずいた。
「とにかく、夕陽。
お前は南々瀬ちゃんから一番遠い席に座れ」
「はあ?」
「はあ?じゃねえよふざけんな」
お前のせいで空気がギスギスしてんだよ。
普段バラエティ番組に出てる時は愛想振りまいて空気読んでるくせに、なんでこう親しいメンツでいる時はクソガキぶりを発揮するんだお前は。