【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「昼食、もうすぐ準備できるみたいですよ。
……あ、瑠璃、南々先輩に抱っこしてもらってるんですか?」
「そ〜。
はじめは人見知り発揮してたのに、もうすでにご機嫌だねえ。甘えてるじゃねえの」
もどってきたルノと呉羽。
一度爆弾を落とした夕陽は、それ以上特に何か仕掛ける様子もなく、もどってきた呉羽と大人しく会話していた。頼むからそのままじっとしてろ。
「……いつみ。眉間にシワ寄ってるわよ」
「……お前らの兄弟喧嘩は聞いてて疲れる」
「聞いてるだけで疲れるなら、言い合ってる方はもっと疲れるわよ。
……ごめんね、まさかあいつが南々瀬ちゃんの元カレだと思わなかった」
あとまさかこんな目の前でキスすると思わなかった。
しかも、遊びではなくて本気っぽいから余計に困る。一時期から夕陽の女癖の悪さが目立つようになったけど、それってたぶん……
「……別に謝ることじゃねえだろ」
顔を上げたいつみが、南々瀬ちゃんを見据える。
彼女のそばに夕陽が近づくから声をかけて止めようかと思ったけれど、普通に話しているせいで、余計なことは言えなかった。
「……前に椛が、
NANAは女関係にだらしないって言ってたけど」
……で、それを聞くのね南々瀬ちゃん。
ピシッと空気が不穏に軋んだことになんて気づかない彼女は、無垢に首をかしげてみせるけれど。心なしか口調が冷たい。
「そんなん噂じゃん。
俺の場合週刊誌に嘘しか書かれてないからね」
「……そう」
心なしか、っていうか、本当に冷たい。
そんな姿も彼女は普段見せないから、なんというか、ある意味彼女の素を見ているような気がする。さっきも随分と夕陽のことを突き放していたけど。