【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「別に何も。
ただモテるだろうなと思って聞いただけなので」
「好きでもねえ女と付き合ってどうすんだよ」
「………」
……なら、わたしとは付き合いたいと思ってくれてるんですか?と。
そんな質問が口を突いて出そうになって、チーズを絡ませたプチトマトと一緒に呑み込んだ。ばかげてる。聞いてどうするんだ。
「それでも先輩となら付き合いたい女の人はいると思いますよ」
「……お前なんか腹立ててるだろ」
先輩に腹は立ててない。先輩には。
どうせ言えもしないのに、勝手に先輩に言い寄りたい数多の女性に嫉妬してるだけで。そんな立場でもないくせに、偉そうな自分に腹が立つ。
彼は嫉妬したって言ってくれたけど、あれはわたしを好きだと言ってくれた上での発言だ。
彼女でもないわたしが嫉妬したと言うのとは、また訳が違ってくる。
「まあまあ、ふたりとも。
せっかくの誕生日祝いなんだからそんな険悪なムードで話さなくたって良いじゃない」
「そうですよ。
南々先輩は一人っ子って仰ってましたよね。……あ、夕陽と付き合ってる時ってどんな感じだったんですか?」
「……どんな?」
「ほら、夕陽ってああいう性格じゃないですか。
先輩とふたりになると、また違うのかと思って」
あの夕陽ですよ?と言ってるルノ。
兄である夕帆先輩もそれに想像がつかないらしく、訝しげに眉間を寄せているし。
どんな……どんな、って。
確かに意地を張っている部分や、大人になろうと背伸びをしているところはあるけれど。夕陽は元々根がとても素直な子だから。