【完】こちら王宮学園ロイヤル部
これは嘘じゃない。
本当に、どの学科でもいいと言われたのだ。
大和とみさとが普通科だってことも知っていたし、勧められた特進科にこだわるほどでもなかった。
わたし自身がどこでもいいと思ったから、消去法で選んだだけ。
「……そうか。
本来ならここに入るには成績が必要になってくるが、お前は特例でそれも免除にする予定だった。……が、お前の成績なら必要ない」
「、」
「普通科から部員を選出するのが禁止されているわけではないからな」
……それも免除にする予定だったってことは、彼らは本当にわたしを入部させる気でいるらしい。
確かに異例ではあるけれど特別目立つこともないわたしを引き入れたって、どうしようもないのに。
……というか。
「ひとつだけ、聞いてもいいですか」
グラタンを完食して、一息ついた後。
"ついで"で買ってきてくれたらしいシフォンケーキを目の前に出されたわたしは、ソファの上で居住まいを正す。
途中で帰ってきたルノくんが昼食を終えた後、おかわりで淹れてもらった紅茶の芳醇な香りが部屋に漂う。
見回す部屋はやっぱりどこか現実離れして、息苦しかった。
「聞きたいこと?」
テーブルの真ん中に置かれた、花の絵柄が綺麗なお皿。高そうなそれの上には、ひとつずつ金紙で包まれた正方形のチョコレートが乗せられている。
……正方形のチョコレートって、高そうに見える不思議。
「昨日の、『条件を満たしている』っていうのもふくめて……
どうして、"わたし"じゃなきゃいけないんですか?」
深い意味もなく、ただただ素朴な疑問。
長らく「姫」を探していた彼らが、すこし会っただけで、わたしを強制にでも入部させたいその理由。