【完】こちら王宮学園ロイヤル部
ああでも、ご両親は研究者だって言ってたし。
頭の良さも遺伝なのかな、と連絡を入れている南々先輩を見やる。それに気づいた彼女が、スマホを耳に当てたまま視線を合わせて小さく笑った。
……なんですかそれ。かわいいんですけど。
「あ、ロイヤル部の姫川です。
芸能科のステージの設営って終わりました?」
こんなに美人で頭が良くて仕事もできる人なんて、ほかにいないし。とんでもない逸材だと思う。
一体、将来何になるんだろう。
「了解です。
それじゃあ夕帆先輩にそっちに向かってもらいますね。……あ、じゃあそれも持っていきます」
夕帆先輩がそれを聞いて、パソコンを閉じた。
それから電話の終わった彼女は、「あとセットの緩みがないかの確認で終わるそうです」と告げて。
ロイヤル部のリビングの奥にある部屋から、筒状に丸めてある巨大な模造紙を持ってきた。
明日のドームで行われるステージパフォーマンスのタイムテーブルを書いたもので、確かドームの入り口に貼る予定で用意してあったものだ。
「最後に貼るので、持ってきてほしいって」
「はいはい、了解。
んじゃあたし行ってくるから、あたしのいないとこで仕事サボったりしないように」
じゃあねと手を振った夕帆先輩が、模造紙を受け取ってリビングを出ていく。
これだけ忙しいけれど備品の数も揃えてからの最終チェックだから、明日問題があるとすれば当日のハプニングぐらいなものだろう。
「あ、わたし文化部の部活棟も一通り回ってきますね。
ほかに外で済ませなきゃいけない用事とかって、なかったですか?」
「良いからちょっとゆっくりしな〜。
部活棟の見回りなんて最後でもなんとかなんだからよ〜」
「じっとしてると落ち着かないの。
何かあったらどっちのスマホでもいいので連絡くださいね」
それじゃあ行ってきます、と。
自分のスマホと連絡用のスマホ、C棟に入るカードの入った財布を持った彼女は、あっという間にリビングを出ていってしまった。