【完】こちら王宮学園ロイヤル部



どちらかといえば、興味本位に近いのかもしれない。

でもどうせ、強制入部させられるのなら。すこしずつにでも、自分の力で知ってみたいだけ。



「お前が、お前だからだよ」



「……まじめに答える気あります?」



「大真面目に答えてる」



……うそだ、絶対。

わたしがわたしだから、と言われてもそれが入部の理由にはならない。たとえそれが本当の理由だったとしても、わたしがわたしだから、わたしを入部させたいという意味もわからない。



「姫川先輩は、」



チョコレートの包み紙を開きながら、ルノくんがわたしを見る。

視界の端では、騎士椛がなぜか食べ終えたチョコの包み紙で器用にハートを折っていた。




「僕たちのこと、嫌いですか?」



子どもじみた、素直な問いかけ。

だけどその答えひとつで、明確に何かが変わってしまうことを悟る。



人は、学ぶ生き物だから。

知識が増えるにつれて。できることが増えるにつれて、単純なことほど難しいと感じるようになってしまう。……だから、怖い。



難しいと思うほど、簡単なことが怖い。

今だってただ純粋な問いかけなのかもしれないのに、ついつい裏があるんじゃないかと疑ってしまう。



大人になるほど、自分からかけ離れていくのを、明瞭に自分で感じ取っているから。

だから無垢であることを、遠ざけてしまいそうになる。



「……ううん。

嫌いだなんて、一度も思ってないわ」



抜けきらない客観的な考え方と、ボーダーライン。

事を起こさないようにするためには、何をするにも「普通」が正解だった。



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