【完】こちら王宮学園ロイヤル部
ふたりともなぜかわたしの頭を撫でて、「じゃあね〜」「じゃーな」と足早に去っていく。
……だから、なんでみんなわたしの頭を撫でるんだろう。
「わたしたちも配置につきましょうか」
「うん」
とは言いつつものんびりしていられないと、わたしたちも受付の簡易テーブルの後ろに置かれたパイプ椅子へと腰掛ける。
……受付の確認はもう終わってるから、わたしたちはただここにいればいいだけで。
「あ、電話」
ポケットに忍ばせていたスマホが鳴ったことに気づいて取り出してみれば、相手はいつみ先輩。
何かと思えば「何かあったら連絡しろよ」と子どもに言い聞かせるように告げただけで、返事すると彼は電話を切った。
……わざわざそれを言うためだけに連絡してきたらしい。
「いつみは、やさしいね?」
「……うん、そうね」
ブラウンがかったグレーの瞳が、陽光を受けてきらきらと煌めく。
ルアもだいぶ人慣れしてきたようで実行委員の子たちとも仲良く話していれば。あっという間に時間は過ぎて、午前10時。
『ただ今より、王宮学園文化祭を開始致します』
10分前に間も無く開始の放送を担当したルノの放送が、広い学園内に響く。
それと同時に一度閉ざされた巨大な門が開くと、受付には一瞬にして雪崩れ込むような行列が出来上がった。……うん、想像以上だ。
『一般受付』の担当が横並びに8列あって、正直そんなにいらないんじゃ、と思っていたけれど。
全然いる。というか、むしろ足りない。
ちなみにわたしとルアは『特別受付』と貼られたテーブルの担当で、取材するテレビ局やら来賓の方の受付。
こっちにも列は出来上がっているから、と。できるだけ自然な笑みを浮かべて、受付を開始した。