【完】こちら王宮学園ロイヤル部



来賓の方が来られるたびにルアかわたしがいつみ先輩に電話を入れて来てもらい、取材の場合はアポを確認してからパンフレットと取材の注意書きが書かれた書類を手渡す。

その作業をひたすらに繰り返すこと、2時間。



開場から2時間も経てばさすがに落ち着いてくるわね、とまだ忙しいけれど最初に比べて随分落ち着いた受付で息をつく。

一般の方はまだ人がいるけれど、特別受付はほとんどが2時間内に終わったため、あとはすこしだけだ。



様子を見て一般の受付を手伝おうかと思っていれば、ふと近づいてきた男の子たち。

わたしの方へと歩み寄ってくるから、一般受付の方に通そうとして。



「……ナナ」



小声で囁かれたそれに、思わず目を見張る。

わたしのことをこう呼ぶのは彼だけだ。



「夕陽、」



サングラスとマスクで顔を隠していると思えば、まさかの夕陽。髪が黒髪にもどってる。

……って、そうじゃなくて!なんでいるの!?




「『Fate7(フェイトセブン)』は午後から車で来る予定だったでしょう……!?

しかも裏口だって連絡したわよね……!?」



まわりに聞こえてしまわないように、小声で彼に告げる。

『Fate7』というのは、7人組の人気アイドルグループだ。……そう、何を隠そう夕陽が所属するアイドルグループ。



実は今日の、ドームで夕方に一枠だけ『サプライズステージ』というコーナーがある。

その一枠は毎年生徒会が行うコーナーで、生徒会役員のステージでも、ゲストを呼んでも構わない。



そのコーナーをどうしようか、話し合った時。

「『Fate7』呼べばよくね?」と言い出したのが莉央で。でもまあ彼らのような人気アイドルを呼ぶ経費なんて、なかったのだけれど。



「別にいいよ? スケジュール空いてるし」



試しに連絡したら、夕陽からすんなりいいよの返事。

経費のことで打ち合わせしようとしたら、「みんなそういうの好きだからお金もらわなくてもやるよ」ととんでもないことを言い出した。



そういうわけには、と。

彼らのマネージャーさんとも話をさせてもらったのだけれど、全然大丈夫と言われてしまい。



< 361 / 655 >

この作品をシェア

pagetop