【完】こちら王宮学園ロイヤル部
さすがに言わないほうがいいかな、と口を閉ざしていたら。
「俺の兄貴と付き合ってるよ」と夕陽があきれたような声色で助け舟を出してくれた。
「あ、そうなんだ?
そっかそっか、NANAはいくみと幼なじみみたいなものだって言ってたもんね」
ふわりと笑ったミナさん。
とりあえずそれぞれ好きにくつろいでもらって、紅茶でも淹れようかな、とキッチンに立つ。そこでガチャッと扉が開いて。
「おいおいマジで揃ってんじゃねーか。
おいこら夕陽。お前は時間も守れねえのか?」
「その経緯ならもうナナに話した痛い頭掴まないで」
いつみ先輩と、莉央の姿がある。
どうやらふたり合流して来たらしい。いつみ先輩はふっと小さなため息をついて、それからミナさんと何か話し始めたけれど。
会話の内容が聞こえない。
莉央に頭をガシッと掴まれている夕陽を呼び寄せたら、彼は喜んでこちらに飛んできてくれた。
「なに? ナナ」
「みんな紅茶で出しても大丈夫かなって」
「別に気遣わなくていーのに。
リーダー以外のメンツは、ただ王学が気になって遊びに来たようなもんだし」
「……でも経費のこととかほんとに大丈夫?」
「大丈夫だって。ここの理事長、芸能事務所持ってるでしょ。だからうちの社長とも仲良いの。
その筋でオファー受けてんだし、リーダーがいくみの元カレなのもあるから」
ああ、だからあんなにすんなりオファーが通ったのね。
代わりに焼肉の打ち上げでOKが出るなんて、本当にとんでもないな。
なんて考えながら、結局夕陽に教えてもらってコーヒーと紅茶の用意をしている間。
なぜかじいっと夕陽に見られているから、なに?と首をかしげたら。