【完】こちら王宮学園ロイヤル部



「……化粧してる?」



「え? ううん、してない」



「うそ。

じゃあ、なんか……綺麗になった?」



揶揄うわけでもなく。

ただ思ったことを言うみたいに真顔で聞いてくる彼に、思わず手が止まる。綺麗になった?って、そんなの聞かれても困るんですけど……!



「気のせいよ。

ほらだって今日文化祭だから、張り切って、」



「そう言うなら。……目、逸らさないでよ」



くっと手首を掴まれて。

反対の手で顎を掬うように持ち上げる夕陽に、かあっと全身が熱を上げる。なんでこの子は、毎回タフに迫ってくるんだ……っ。




「っ、」



視線を絡め取られて、逃げられない。

じわじわと頰が熱を帯びていくのを感じる。



「ほらやっぱ。……可愛くなってんじゃん」



「っ……」



綺麗にも、可愛くも、なってないのに。

夕陽のセリフにくらくらする。いつみ先輩のことが好きなのに、確信犯すぎる夕陽に惑わされる。



手首を掴んでいた手が、今度は髪を撫でて。

ますます赤くなる頰を見て、楽しげに口角を上げる夕陽。彼のくちびるが耳に触れて、何かを囁こうとしたのか、吐息を感じたその瞬間。



「NANAちゃん。それどこまでやんの?」



< 367 / 655 >

この作品をシェア

pagetop