【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「……化粧してる?」
「え? ううん、してない」
「うそ。
じゃあ、なんか……綺麗になった?」
揶揄うわけでもなく。
ただ思ったことを言うみたいに真顔で聞いてくる彼に、思わず手が止まる。綺麗になった?って、そんなの聞かれても困るんですけど……!
「気のせいよ。
ほらだって今日文化祭だから、張り切って、」
「そう言うなら。……目、逸らさないでよ」
くっと手首を掴まれて。
反対の手で顎を掬うように持ち上げる夕陽に、かあっと全身が熱を上げる。なんでこの子は、毎回タフに迫ってくるんだ……っ。
「っ、」
視線を絡め取られて、逃げられない。
じわじわと頰が熱を帯びていくのを感じる。
「ほらやっぱ。……可愛くなってんじゃん」
「っ……」
綺麗にも、可愛くも、なってないのに。
夕陽のセリフにくらくらする。いつみ先輩のことが好きなのに、確信犯すぎる夕陽に惑わされる。
手首を掴んでいた手が、今度は髪を撫でて。
ますます赤くなる頰を見て、楽しげに口角を上げる夕陽。彼のくちびるが耳に触れて、何かを囁こうとしたのか、吐息を感じたその瞬間。
「NANAちゃん。それどこまでやんの?」