【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「それなら、それでいいと思いませんか?」
「……それでいいって?」
「姫川先輩は、僕たちのことを嫌いだとは思ってない。
そして僕たちも、嫌いだとは思ってません。だから、それでいいと思うんです。プラスばかり求めていたって、人間関係は上手くいきませんから」
わたしの中でプラスになると思う相手は、大和やみさとだ。
逆にマイナスになると思う相手は、わたしがここにいることでわたしを妬む女の子たち。
「……マイナスになることを考えたら、
プラスマイナスゼロの関係の方が結局得だっていう考え方?」
「はい。そういうことです」
0に対して1を求めても。
マイナス1に0を求めれば、結局同じぐらい得をしている、ということだ。最低値がどこからはじまるか。ただそれが、問題なだけで。
「……女王先輩」
「うん、何かしら?」
「昨日お返しした入部届、
いま書かせてもらってもいいですか?」
青い瞳を細めて、彼女がふわりと笑う。
それから引き出しに入っていたファイルを取り出して、昨日見た入部届をわたしの前に差し出した。
それにあわせて流れるような動作でボールペンを渡してくれた珠王先輩に、お礼を言う。
それからさらさらと記入を終えて、隣に座る彼に手渡せば。彼は自信ありげに、口角を上げた。
「確かに受け取った。
安心しろよ。──絶対後悔なんて、させねえから」
どうせ誰にも、未来を予想することはできない。
それならたまには、変えてみようと思う。──誰でもない、自分の力で。