【完】こちら王宮学園ロイヤル部
関係ないでしょ、って睨んでくる夕陽。
その本気度がメンバーからすれば面白いらしく、南々瀬が準備していったコーヒーや紅茶片手に俺らのやり取りを楽しそうに見てるけど。
「っていうか、散々女寄ってきそうな顔してるくせになんでナナがいいわけ?」
「お前こそ、散々遊んでたんだろ?」
「っ、それは、」
「偶然成り行きであいつが海外から帰ってきてるの知っただけで。
知らなかったら、遊んでるつもりだっただろ?」
「俺は遠距離だろうと時間がかかろうと、そんなことどうでもよかった……!
それでも留学するからって理由だけ押し付けられて……、後から出てきたくせに、何様なわけ……」
勢い良く言葉を吐き出し過ぎたせいか、息を整えるようにして紡がれる声は小さくなっていく。
それに比例して、やけに尖っていたいつみの声も視線もすこし和らいだ。夕陽相手に、そんなに怒ってやんなくてもいーのに。
「なーな。……ちょっと落ち着きな」
リーダーがそう言って、後ろから夕陽の肩に手を乗せる。
肩の力を抜けとでも言いたげなそれに夕陽は下唇を噛んで俯いた。
「俺らも揶揄いすぎた。ごめんな?」
「……いいよ別に」
取り乱したことに対してなのか、小さく「ごめん」と謝っている夕陽。
俺らの前とはえらく態度が違ぇーなオイ。
「まあお互いに何かしら理由があるのはわかるよ。俺もここの生徒会出身だけど、それをわざわざ『ロイヤル部』なんて名前に変えて彼女を"姫"にしてるぐらいだからね。
……でも、残念ながら。ウチもかわいいメンバーを傷つけられるわけにはいかないんだよね」
……あーあ、不穏な空気漂ってんじゃねーか。
夕陽もいつみも余計なことしやがるから。