【完】こちら王宮学園ロイヤル部
望んでも。それ以上に望んだものがあるから。
だから彼らとは一緒にいられない。どれだけ先輩のことが、好きだったとしても、絶対に。
「どうかしました?」
「……いや。お前ぼーっとしてないか?」
「……ちょっと考え事してました」
一緒にいるのに考え事なんて失礼か、と取り繕うように謝る。
グラウンドにも、やっぱり人は多くて。みさとはわたしたちの姿を見ると、きらきら目を輝かせた。相変わらず、女の子たちの声は止まない。
「いいなあ、姫川さん。
珠王先輩と一緒に文化祭回れるなんて」
偶然聞こえた些細な声。
それもこれも、先輩が"わたし"を探してくれていたから、わたしはロイヤル部にいられるけれど。
「南々瀬。買ってやるから好きなの選べよ」
「……それぐらい自分で出しますよ」
「いいんだよ。お前仕事頑張ってたしな」
ご褒美だって頭を撫でてくれる先輩。
ここで立ち往生するのもなんだし。ありがとうございますとお礼を言ってから、未だに目をきらきらさせてるみさとにクレープを注文する。
「珠王先輩。
もしかして、姫川さんとデートですか?」
みさとのクラスの子からそう絡まれるけど、先輩は小さく笑うだけで。
「さあな」って意味深に言ってわたしの頭を撫でるから、余計に周りが色めき立つ。違うって否定するのもなんだか憚られて、口を閉ざせば。
「俺はそう思ってるけど」