【完】こちら王宮学園ロイヤル部



ぽろっと。後から付け足されたそれ。

まるで一瞬時間が止まったんじゃないかと錯覚してしまうほど綺麗に、みんなの動きが止まる。……うん、ちょっと待って。



「えっ、え……!?

なんですかその意味深な発言……っ!」



「もしかして先輩の片想い!?」



変な憶測が飛び交ってるし……!!

なんでそんな風に言っちゃうんですかと睨むように赤い顔で睨むけれど、いつみ先輩はまたもや不敵な笑みを浮かべるだけ。いい加減にしてください。



「先輩はってことは、

姫川さんはそう思ってないってこと……?」



「え、そんなことないでしょ。

だって、付き合ってるんですよね?」



そして、付き合ってる説がどんどん濃くなってきてしまってる。

いやでもここで否定して、「付き合ってません」なんて言ったら、わたしを好いてくれてる先輩に失礼だし。




「わ、わたしもそう思ってます、よ?

ただ、いきなりデートって言われてびっくりしただけで……」



き、厳しい。我ながら言い訳が厳しい。

付き合ってないことと、わたしが先輩を好きだってことを知ってるみさとは肩震わせて笑っちゃってるけど……っ!



とっさにデートだと思ってる発言を肯定すると、途端に周囲は「だよねー」とか「やっぱ付き合ってるんだってー」という安堵したような声でかき消されていく。

……付き合ってないんですけど、ね。



「はい、南々瀬。どーぞ」



「……ありがと」



「チョコソースのトッピングおまけしたからそんなに怒らないでよー」



小声でごめんねって謝ってくれるみさとに「別に良いわよ」って返してる間に、先輩はクレープ代を払ってくれていて。

楽しげにみんなに見送られて、その場を後にした。



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