【完】こちら王宮学園ロイヤル部



◆ Sideルノ



「いつみ先輩」



授業に出てくる、と、姫川先輩は5限終了のチャイムと同時に、リビングを出ていった。

昼休みが終わった時点で彼女はもどると言っていたのだけれど、椛先輩に強引に引きとめられていたから、仕方なく5限もここにいてくれた。



……まあ、昨日の時点でいつみ先輩が仮入部の話を通してあるから、すでに彼女は授業免除になっているのだけれど。

真面目な人だな、と頭の片隅で思いながら、受け取った入部届を楽しげに見つめる彼を呼ぶ。



「なんだ?」



「……すみませんでした、余計なこと言って」



いつみ先輩は、昨日から彼女を入部させる気でいた。

強制入部の許可までもらって、絶対的に。



なのに、俺が余計な事を言ってしまった。

きっといつみ先輩は、自分の言葉で入部させたかったはずなのに。




「なんでお前が謝るんだよ」



「だって、」



「むしろ褒められてもいいぐらいだろ。

俺は強制的によりも、あいつ自身が望んでる状態で入部させたかった。だから、お前が謝る事なんか何もねえよ」



ありがとうな、と。

どこまでも穏やかな声でお礼を言ってくれるこの人が、まぎれもなく今この学校のトップだから。俺も弟のルアも、ここにいられる。



「るーちゃんは、真面目だよねえ」



ゆったりとした声が耳に届いて、そっちへと視線を向ける。

どうやら折り紙には飽きたらしい。彼の手元にはハートと、折り掛けの鶴が置かれていた。



『わたしだって……

──後悔する気で、入るわけじゃないですから』



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