【完】こちら王宮学園ロイヤル部



……クレープをひとつ買いに行っただけなのに、この疲労感。

ほかに買い物しなくて良いか?と問われて、先輩はいいんですか?と返す。先輩も動きっぱなしで、お昼は何も食べてないはずなのに。



「この調子で回ってたら時間なくなるだろ。

あとで夕帆と椛パシらせて買いに行かせるからいいんだよ」



……確かにこの調子じゃ、1時間なんてあっという間に過ぎてしまうだろう。

それに毎回毎回ああやって質問攻めにされたら、わたしの心臓がもたないと思う。



「お前が行きたいところあるなら、寄ってやるぞ。

別にないなら、適当に校舎見回りしてもどればいい」



「じゃあ、それで……」



「ん。座って食べなくて良いか?」



クレープを食べるために、離れた手。

それを名残惜しんでいる場合じゃない。「大丈夫です」と答えて、普段はしないけれど今日だけは食べ歩き。




「……それにしても、すごい人の数ですね」



「まあ、ウチのは人気あるからな」



すごい人の数なのに、廊下を広々と歩ける。今日ほどこの学校の廊下がありえないぐらい広くて良かったと思ったことはない。

おかげで教室の様子もちらちらと見えるし。



「……今更ですけど先輩って何組なんですか」



「あ? 俺も夕帆も3組」



特進の3年3組ってことは……ホストクラブか。

なんていうか、先輩が参加していたら間違いなく売り上げが1位だったんだろう。想像できる。



そしてこれ以上ないくらいスーツが似合うんだろうな、と思っていれば。

めずらしく悪戯な笑みを浮かべてわたしを見る先輩。……なんですかその笑み。ちょっとキュンとするからやめてほしいんですけど。



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