【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「もてなしてやろうか?」
「……はい?」
「お前のこと。
専属で、たっぷりもてなしてやるよ?」
顔を覗き込まれて、甘い言葉をためらいなく囁く彼のせいでクレープを落とすんじゃないかと思った。
……っていうかもう今日の先輩がホストみたいなんですけど。甘すぎるんですけど。
「まあ、もてなす代わりに永久指名だけどな」
「……ホストはお客さんと恋しちゃだめだと思うんですけど」
我ながら可愛くない返しだ。
でもそうしないとドキドキがおさまらないから困る。そんなわたしの心情を見抜いているのかいないのか、先輩は楽しげに笑うだけで。
「ん」
クレープを食べ終えたあと。
残ったゴミを通りかかったゴミ箱に捨てると同時に、差し出された手。つなげという意思表示らしいそれに、文句を言わずに手を重ねた。
まわりの女性の視線は相変わらず先輩に釘付けで。
でもそれを機にすることなく、わたしだけに甘い言葉をたくさん囁いてくれるから。
「……そろそろもどる時間だな」
魔法が溶ける瞬間が、惜しい。
この手を離したくなくて、わがままなんて言えないのに、ドキドキさせられてばかりで心臓だって痛いのに、まだふたりでいたい……なんて。
「先輩……」
B棟、D棟、E棟、文化部部活棟。
そこまでは一応歩いてみたけれどラボとドームまでは回りきれなくて、ドームの前で折り返し。