【完】こちら王宮学園ロイヤル部



「あと2時間ぐらい……?」



「そうね。

夕帆先輩、音響周りの打ち合わせは大丈夫ですか?」



サプライズゲストだから、本番直前ドーム裏に行くまでほかの生徒たちは彼らが来ていることを知らないわけだし。

音源に関しても管理しているのは夕帆先輩だから、わたしじゃどうしようもない。



「大丈夫よ。

さっき彼と軽く打ち合わせもしたし、あとは各自で声出しやってもらって。どうせ放っといたらやるだろうけど」



色々と雑だな。

もしかしてミナさんがいくみさんの元カレってことを、根に持ってるんじゃないだろうか。……いや、夕帆先輩に限ってそれはない、か。



「ナナ。……兄貴じゃなくて、俺にかまって」



甘えるように。

夕陽に手を握られて、「はいはい」とやわらかな黒髪を撫でる。心地良さそうに目を細めた彼は、まだ眠気が抜けていないのか少し眠そうだけど。




「今から、ここにいつみ帰ってくるわよ」



「……知らない」



「また喧嘩しないでよ?

揉めるたびに戻ってこれないんだから」



あきれ気味の夕帆先輩の言葉を聞き流し、ソファの隣を指差す夕陽。

そこに腰を下ろしたら、彼はわたしに寄りかかるようにして目を閉じた。



「……眠い?」



問えば、「ん……」と身じろぎしながら返事する夕陽。

会ったときはそうでもなかったのに、じっとしてたから眠くなってきたんだろうか。



「NANAだけ、

今日の朝から既に1本仕事してきてるんだよ」



< 384 / 655 >

この作品をシェア

pagetop