【完】こちら王宮学園ロイヤル部
そう教えてくれたのはミナさんで。
口元に笑みを敷きながら、「NANAはいちばん仕事持ってるから」と、夕陽のことを優しい視線で見つめている彼。
「朝早かったならゆっくりしてればいいのに」
「……だってはやく会いたかったんだからしょうがないじゃん」
「、」
「……ナナにはやく会いたかったんだし」
もういいでしょ?と。
わたしの腕に腕を絡ませた夕陽が、まぶたを持ち上げてくれる気配はない。
……知っていたけれど、相変わらず嫌味なくらい整った顔だ。出会った頃よりも随分と大人っぽくなったのに、甘えたなところは変わらなくて。
指でそっと触れているうちに眠ってしまったのか、小さく寝息を立て始めた。
「……NANAが忘れられない子がいるっていうのは、みんな知ってたけど。
ほんとに好きなんだね、きみのこと」
「、」
「警戒心の強い子だから、眠ってもいつもならすぐに目覚ますんだよ。軽く近づいただけでも気配を感じて起きるぐらいなのに。
……ここまで安心しきって寝てるのは、俺もはじめて見たかな」
これでもなつかれてる方なんだけど、って。
困り顔ではないけれど、すこし困ったようにミナさんは笑う。
「安心しきってるっていうか……
しあわせそーな顔してるよね、コレは」
「ふふっ、そうだね。
来る時『彼女に会えるの嬉しい?』って揶揄うつもりで聞いのに、「うん」って素直だったし」
「あの一言で車の中の時間止まったもん。
っていうか逆に気になったよねー、こんなにNANAのこと本気にさせられる女の子」