【完】こちら王宮学園ロイヤル部
そばに歩み寄って問いかけると、いつみ先輩はふっと微笑んでわたしの頭を撫でる。
それから、「食ってるよ」と言うけれど。どうにもほかのみんなに比べて食べていないような気がしてならない。
別に食が細いわけでもないと思うんだけどな。
もしかしてどこか調子悪いんだろうか、とジッと先輩のことを見上げてみれば。
「お前こそ、ちゃんと食ってるか?」
「食べてますよ?」
「嘘つけ。さっきから話してるほうが多いだろ」
……うん、そうなんだけど。
一応食べてるのに、と言い訳するよりも先に。手の上にある紙皿に乗った食材を平らげる。それを見た先輩が優しく笑うから、息が詰まった。
キスしてしまったこと、どう言い訳すればいいんだろう。
というかわたしがそれを受け入れた理由自体、きっと先輩はわかってないだろうし。
「ななせ」
「……どうしたの?ルア」
それでも何か言葉を、と。
探しているうちにルアが腕に抱きついてきて、「クライマックス、だよ」と窓の外を指差す。とっさに顔を上げれば、夜空にいくつも煌めいて落ちる花の雫。
「あ、」
それに気を取られた隙に、先輩は椛の方へと行ってしまって。
これ以上はもう話せそうにないなと、花火が終わるまで、窓の外をじっと見つめていた。
歪で曖昧な関係性。
わたしを好いてくれている彼らと。
気づけば彼を好きになっていたわたし。
そのわたしが誰にも「はい」の返事をしないのだから。誰一人として報われないことが、ひどく哀しい。──それが自分の蒔いた種だとしても。