【完】こちら王宮学園ロイヤル部



状況がわからず思わず顔を見合わせる。

いつみも、当然ルノもこの状況がどうやら理解できていないらしかった。だってわからない。



彼女は今日、ここにいることを知らないはずで。

なのになんで、と思ったところで、ふとルアに視線を向ければ。それに気づいたルアは、ふっと小さく笑みを浮かべた。



「ぼくが、話した」



「お前……」



「でも、ななせがどうするのかは知らないよ」



そう言われて、思わず彼女に視線を戻す。

そうだ。あの子一体、ここに来てどうするつもりなんだ。珠王でも、敵わない相手だっていうのに。



それどころか、彼女の存在は未だに謎で。

でもこの瞬間に何か大事なことを知るのは、よくわかった。彼女の秘密。些細なことか大きなことかは、まだわからないけれど。




「友人ということは、

君は……彼等の知り合いなのか」



「ええ、ですが。

当然婚約を取り止めていただきたいなんてご無礼は申し上げません。……八王子様」



南々瀬ちゃんの瞳が向いた先は、ルノの母親。

彼女が「ええ」と返事すると、南々瀬ちゃんはあろうことか俺らの予想を遥かに超えた発言をした。



「利益のある存在を求めて、婚約の話を結ばれるのでしたら。

ぜひとも私を、大事なご子息の婚約者にしては頂けませんか?」



……え。え?何て言った?

南々瀬ちゃんが婚約者になるって言った?



「君、一体どこのご令嬢だ?」



驚く俺らをよそに、冷静に尋ねているのは敷島で。

彼女の口紅を乗せたくちびるが動くのに合わせて、思わず息を呑んだ。



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