【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「いいえ、家柄なんて大それたものは。
……大変申し遅れました。私、姫川南々瀬です」
彼女が、名前を名乗った瞬間。
敷島の表情が、凍りつくかのように固まる。
「私の両親をご存知ですよね? 敷島様」
なん、だ。……なんだ、この、違和感。
生ぬるいこの温度が気持ち悪い。敷島の表情は固まってるのに、ルノの母親の表情は状況をつかめていない俺らと同じで。
わからない"何か"が、気持ち悪い。
「あ、ああ。存じ上げているよ」
「それでは、今回の件をご理解いただけませんか?
……いえ。ご理解いただけますよね?」
立場が、変わる。
有無を言わせない南々瀬ちゃんの声と言葉。
「……、わかった。
今回のこの件は、無かったことにしよう」
「ありがとうございます」
途端に威勢を失った敷島は。
誰よりもこの状況を理解できていないであろう娘を連れて、まるで逃げるかのように足早にこの場を去っていく。そして、取り残されたのは。
「南々、先輩……
どういう、ことですか……?」
それでも尚何もわかっていない俺らと。
安堵したかのように息を吐いているルノの母親。
部屋の温度は確かにもどったはずなのに。
さっきの温度が、違和感という形を残しているせいで、ひどく気持ち悪くて仕方ない。