【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「南々先輩、」
「ルノ」
声色の変わらない彼女が、ルノをしっかりとした口調で呼ぶ。
その威圧感に邪魔されたように口を閉ざしたルノの前に綺麗な所作で屈んだ南々瀬ちゃんは、まっすぐにルノだけを見据えた。
「どうして。……どうして、何も言わないの」
「………」
「どうしてわたしには何も話してくれないの。
まさかあの告白が、わたしとの最後にするつもりだった?だったらわたし、はじめからあなたの告白なんて聞きたく無かった」
いつも優しい南々瀬ちゃんからは想像できないくらいに、キツいことを言ってる。
そのせいでルノがくちびるを噛んで俯いてしまったけれど、彼女の言うことは間違っていなかった。
「あなたがそうやって中途半端なことをするから、みんなだってこうやって敵いもしない相手だと理解しながらも来てくれたんでしょう……?
ねえ。わたしは、」
「南々先輩の優しさは、」
ルノが、南々瀬ちゃんの声を遮る。
八王子の名前を持ちながらも前には立たないルノにとって、それは珍しいことで。それだけ本気だってことは、もうとっくに知っていた。
「南々先輩の優しさは、残酷なんです。
中途半端なその優しさに、何人どうしようもなくなってるか知ってます?夕陽が良い例ですよね」
「、」
「中途半端な優しさであなたにフラれて。
どうしようもなくなって、今もあなたのことを想ってます。……いい加減気づいてください。その優しさが一体どれだけ残酷なのか」
恋におちたら、あとは嵌っていくだけ。ずぶずぶと深く嵌ったら、傷つけられることでしか這い上がれない。傷つけられても尚、這い上がれずにいる。
そんな中での南々瀬ちゃんの優しさは、確かに"どうしようもなくなる"原因だった。