【完】こちら王宮学園ロイヤル部
いつみが、椛が、ルノが、莉央が、夕陽が。
その深みに嵌ってること、知ってる。
手探りの中で椛が見つけた感情も、まっすぐな彼女に惹かれたルノも、それ以上に従順が勝つ莉央も、忘れられない夕陽も、10年以上の想いを引きずってるいつみも。
それぞれ形は違えど、中身は同じだった。
「それを知ってたから、怖いんですよ」
「……ルノ」
「わかってます。この話を黙っていたのも婚約の話を受けようと思ったのも、俺が南々先輩のことを好きだからです。
……きっぱりフラれて前向けるわけないじゃないですか。どうしようもなくなるぐらいに好きなんですから」
南々瀬ちゃんじゃ、なかったら。
ほかの誰かが、彼女を想っていなかったら。
実現したかもしれないそれも。
南々瀬ちゃんだから。ほかにも好きなヤツがいるから、って。ただそれだけの、理由で。
「この先の人生の恋愛をあきらめてしまおうと思うぐらいに先輩のことしか見えてないって言えます。
だから、あきらめたかったんですよ……」
「………」
「こうでもしないと……
ずる賢い自分でしかいられないんです」
きゅっと、ルノがくちびるを結ぶ。
いつもよりも声を荒げたこともあって、冷静になろうと躍起になっているようにも見えるそれ。
歪んで変な温度を保つ、この空間を破ったのは。
「南々瀬ちゃんって、言ったかしら。
さっきの話だけど、ぜひとも受けたいの」
ずっと黙って様子を見ていた、ルノの母親。
にこりと笑ったかと思うと、そんなことを言い出した。