【完】こちら王宮学園ロイヤル部



解せない。……まったくもって解せない。

とんだ偽さわやかプリンスじゃないか。



出会った時はあんなに可愛げのある王子様だったのに。

どこでどう間違えて、まるで夕陽みたいな性格になってしまったんだろう。



って、ああ……

夕陽もテレビの向こうや舞台の上では表向きさわやかキャラで通ってるんだっけ。



もうさわやかな人を信じられそうにない。

信じたら痛い目を見る気がする。



「……もどらなきゃ」



なんだかぐったりしながら、C棟の廊下をもどる。

それからリビングに帰ると、莉央に「お前どーした」と言われてしまった。ちなみに椛はキッチンで人数分のお弁当を作ってる。



ここまでお昼を食べに戻ってこなくていいように、だそうだ。

ちなみに雨ならドームで開催する予定だったけれど、晴れているからグラウンドでの体育祭。




「ルノと話せたのか?」



「はい、なんとか……

それよりいつみ先輩、体調大丈夫ですか?」



なんだか部屋を出る前よりもつらそうに見える。

普段飄々としている人だから、マスクをしているだけでなんだか不安になってしまうし。



「ああ。別に俺は競技出ねえからな」



絶対王者の権限をフル活用して、いつみ先輩は競技に出ない。

しかも運動嫌いなわたしが「出たくないな」とぼやいていたら同じように権限を駆使してくれて、わたしも体育祭の競技は見てるだけ。



その代わり実行委員の腕章をつけてるから、救護係を兼ねて本部テントにいなきゃいけないけど。

約1名は運動好きだし、残りの4人もなんだかんだ身体を動かすのが好きなようで出るらしい。



……勉強も運動もできるって、ほんとにエリートだな。

夕帆先輩曰く、「いつみも人並み以上に運動できる」らしいけど。



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