【完】こちら王宮学園ロイヤル部
・恋人という関係
◆
「南々瀬、帰ろうぜ」
──放課後。
そう声を掛けてきたのは大和で。あ、うん、と頷こうとして、6限が終わった頃に届いたメッセージを思い出す。
「いいんだけど……あの、C棟寄ってもいい?」
「C棟? なんか呼び出されたのか?」
「生徒会役員のバッジが出来たから取りに来て欲しいらしくて。
あ、それかここで待ってる?終わったらもどってくるけど」
「バッジ……?
んー、近くまで一緒に行くわ」
そう言ってくれた大和と、教室を出る。
ほかの生徒たちは部活に行くようで、「姫川さんまた明日」と手を振ってくれる男の子たち。女の子たちとは残念ながら、仲良くなれそうにない。
「大和、部活入ってないのね」
いつみ先輩が言っていた言葉が、脳裏をよぎる。
部活動には絶対入部のこの学校で、大和は数ある部活のどれにも属していない。つまり、「理事長直々に認められた人」の一人だ。
「あー……
できない、わけじゃないんだけどな」
「うん。花ちゃんが心配なんでしょう?」
「……まあ、そういうこと」
大和には小学2年生の妹、花ちゃんがいる。
彼女が幼稚園に通っていた頃には専業主婦だった木崎ママも、いまはパートで働いているらしい。
そのため、放課後花ちゃんの面倒を見ているのは大和だ。
放っておけないってわけじゃないけど、やっぱりまだ数時間ひとりにしておくのは心配なようで。