【完】こちら王宮学園ロイヤル部
焦ってしまうほどに、甘い彼の声。
それはどう考えても女性のものではなくて、脳内には彼の声が甘い痺れのようにジリジリと残る。ぶわっと肌が熱を上げるのは一瞬で。
「ふたりっきりで、って言おうとしたけど。
そんな真っ赤ってことは……俺が言うより先に、想像した?」
ツッと指で頰を撫でられて、尋常じゃなく身体が熱い。
なにこの人。……なんでこんなに甘いの!?
「……夕帆」
「はいはい、冗談よ。
ごめんね南々瀬ちゃん。かわいい反応してくれるから、つい揶揄いたくなっちゃった」
「つい、って……」
「まあ、あたしが男なのは本当よ。
いま部屋に財布あるから見せられないけど、学生証にもちゃんと男って記載されてるし」
詐欺だ。絶対に詐欺だ。
女として接して、都合良く女の子を弄んでるに違いない。だってそうじゃなきゃ、あんな甘い声で囁いたりしないもの。
「で、なんで南々瀬ちゃんここにいるんだっけ?」
「あ、えっと」
「バッジを受け取りに来させたんだよ。
余計なことしてる暇あったら、お前はさっさと溜まってる仕事しろ」
言い捨てて、珠王先輩が席を立つ。それと変わるように女王先輩は何事もなかったかのような素振りでソファにもどっていった。
……人の気も知らないで。
呑まれたら負けだと、目の前に立った珠王先輩を見上げた。
小さな白い箱を手渡され、蓋を開ける。ご丁寧にもクッション地にやわらかく埋められたピンクゴールドのバッジ。冠を模して、「R」を刻印したそれ。
「お前のは特別仕様だ」