【完】こちら王宮学園ロイヤル部
権力者というのはタチが悪い。
自分の都合の良いように事を進めるためになら、どんな手段も選ばない。
「……南々瀬を、人質にしたのか」
「そう。……あの子はもう既に生まれてたから。
『娘の一生の金銭面と安全面は保証してやる』なんて言葉で、姫川夫妻に断る術を与えなかった」
あの子は幼い頃にこの国の未来のために人質にされた。
断れば娘の身が危ない。
そうなれば姫川夫妻は、どうしても断れなかった。
もしその政策が上手くいけば、桁違いの人間が危険にさらされるとわかっていても。それでも大切なのは、自分たちの間に生まれた唯一の娘。
「あの子が、一度だけ。
拉致されたでしょう。教養の子に」
あの子はあの時、あらかじめそれも想定していた。
だから一生の身の安全を保障してくれる政府の人間に連絡を入れておいた。拉致した教養の子のうちひとりは、祖父が有名な政治家。
おそらくその秘密裏に行われている政策を知っている人物だったんだろう。
祖父から「その子をすぐに解放しなさい」と連絡があって、教養の子たちは訳も分からずに彼女を解放した。
秘密裏に行われている計画を知っている人間は、誰もが「姫川南々瀬」の名前を知ってる。
有名な政治家たちが揃いも揃って頭の上がらない相手。
ルノの婚約が解消できたのも、それのおかげ。
彼女が一等地の最高級マンションに住んでいるのも、彼女の安全を保障するため。
もし万が一にでも南々瀬ちゃんに何かあれば、姫川夫妻を計画に縛れなくなる。
だから政府の人間は、南々瀬ちゃんを絶対的に守らなきゃいけなかった。
「……でも、気になることがある。
その計画、珠王も八王子も関わってるんだろ?」
「ええ、そうよ。
珠王は実験施設の提供、八王子は資金を援助してる」
「……珠王はそんな下衆な計画に手を貸さねえよ」