【完】こちら王宮学園ロイヤル部
「しかも姫川夫妻は……
14年前、いつみが自分の娘にプロポーズしてくれたことを知ってた」
プロポーズしてた、というのは、わたしも最近知ったことだ。
それは本当に些細な子ども同士の約束。
他人から見れば馬鹿馬鹿しいほどの口約束なそれ。
だけどいつみがそれを本気で叶えようとしてくれていることを知った姫川夫妻は、とある策を練った。──娘を、解放する策を。
「……珠王と八王子に、話を持ちかけたの。
もし南々瀬ちゃんがいつみとの約束通り結婚できるなら、自分たちが作ってきた研究をすべて消すって」
「……自殺する気なのか」
「ええ。15年続けた、やりたくもない研究と一緒に。
……そうなれば間違いなく身の安全を保障した政府が南々瀬ちゃんを狙う。だけど珠王と八王子の力があれば、彼女一人くらい守れる」
だから、この学園じゃなきゃいけなかった。
南々瀬ちゃんを14年変わらず求め続けたいつみがいるこの学園に、あの子は転校してきた。
4月にロイヤル部が出来上がってすぐ、姫川、珠王、八王子の3家はすでに計画を立てていた。
南々瀬ちゃんを守り、政府の秘密裏の政策を終了させる計画を。
「だからここに転校してきた彼女を。
理事長が、ロイヤル部強制入部にしたの」
いつみは間違いなく南々瀬ちゃんを放ってはおかない。
14年募らせた愛情があれば、彼女を守ってくれる。
そして事実、いつみは彼女に一途だった。
その様子を八王子側から、逐一共有。
毎回そうやって気に掛けていれば、ロイヤル部のメンツも本人も気づいていなかったけど、彼女にはとある変化があった。
明らかに、いつみの方に矢印が向き始めてる。
夏休みに入る時、理事長があの子に「一連の計画は冬に終了する」と言ったけれど。
あの時すでに遠巻きに見ていた限り、いつみの方へと矢印は向いていた。
だから3家は、計画の実行を早めることにした。
南々瀬ちゃんといつみが永遠を誓うまでそう時間はかからない、と、考えて。