【完】こちら王宮学園ロイヤル部



その結果、10月最後の現在。

彼女は見事にいつみを好きになり、いつみも当然彼女のことが好き。そうなれば不安はもうない。



体育祭のとき、彼女に確認したのはそれだ。

最終的に南々瀬ちゃんの縋るものは、いつみになる。



姫川夫妻は最初、自分たちは研究と一緒に自殺して、娘だけを安全なところに残しておこうと決めた。

だけど珠王と八王子はそれを良しとせず。



考え出した結果が、もうすぐ出る。



「12月末……

あの子は一度海外に飛ぶわ。日本でもいいんだけど、それだと政府の手が追いつくのが早くなる。だからあえて海外に逃すの」



「……何する気だよ」



「珠王の実験施設を小規模だけど爆発させる。

もちろん、爆発した時にバイオテロが起こらないように安全面は計算して。その際に、15年の研究結果をすべて抹消するの」




誰も幸せにならない研究結果を爆発で処分する。

けれど爆発したのが珠王の実験施設ならば、珠王の上の人間に当然爆発の経緯が伝わるわけで。



「あくまで、"爆発したことで、今回の計画が珠王と八王子にバレた"ことを装う。

それをネタに、政府を揺するのよ」



「………」



「珠王と八王子は、政府にとって必要な存在。

なのにそのふたつの組織に、"15年間も嘘の計画で騙されて、これ以上手を貸せない"なんて言われたら、政府は条件を呑むしかなくなる」



「……何を条件にするんだ」



「姫川夫妻及び南々瀬ちゃんに、今後一切近づかないこと。

それさえ守るのなら、珠王と八王子はこれから先も政府に手を貸す」



ああ、と小さくいつみが声を漏らす。

その内容には賛同なんだろう。いつみだって、今後の彼女の安全以上に必要なものはない。



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