【完】こちら王宮学園ロイヤル部
・魔法の馬車は口約束で
◆
──12月22日。
ハワイへの出発、前日。
「言っとくけど。
電話1本で人気アイドル呼び出せんのって、ナナぐらいだからね?わかってる?」
「わかってるわよ」
わたしは、夕陽と図書館で待ち合わせていた。
中ではうるさく出来ないから、当然外で待ち合わせ。図書館だと人も少ないし、騒げないからNANAだってバレにくいだろうし。
それに何より。
夕陽と出会ったこの場所で、話したかった。
「……話って。
文化祭の時に言ってたあれのことでしょ?」
付き合う前。よく本の内容を話してあげていた、思い入れのある席で。
彼はわたしをじっと見つめる。閉館まであと1時間もないせいか、ぱっと見まわりに人はいない。
「そう。……別れたときの、話」
前置きして、掻い摘んで簡単に自分の話をする。
両親はバイオ実験が終わるまでしばらく時間がかかるから、いずれ海外に一緒に住めるようにと、慣れるために留学を提案してくれた。
そして。
本当は、こうやって日本に帰国する予定はなかった。
「……2度と戻ってこないかも、しれないって。
そういう話が強かったから、留学を理由に夕陽を振った。でもバイオ実験の話はぜったい秘密だったから、夕陽にほんとのことを言えなくて」
「………」
「でも計画に終わりが見えてきたから。
最後にもう一度日本に帰っておいでって言われて、今年帰国したの。ごめんね」
実験があと数日で終わる。
そしたら今度こそ、わたしたち家族、は。