【完】こちら王宮学園ロイヤル部



「みさと……

びっくりするからいきなり抱きつかないでって、いつも言ってるでしょ?」



「うん……」



「じゃあいきなり抱きつかないでくれる?」



「やだ。

聞いたら南々瀬、いつも『だめ』って言う」



顔を上げた、かわいいかわいい女の子。

ぱっちりとした目に、長いまつ毛。やわらかなほっぺはメイクを施しているのか、桜色のチークで彩られていた。



「そういや葛城(かつらぎ)、

大和と同じ中学出身だったな」



クラスの男の子が、つぶやく声。

それにめざとく反応したみさとはようやくわたしから離れて、「南々瀬に手出さないでね!」とまわりの男の子たちを睨む。




「こら、みさと」



「だって南々瀬は、わたしのだもん」



「わたしがいつ、みさとのものになったの?

あんまり周りを困らせるようなこと言わないで」



中学が一緒で、なおかつ仲も良かったわたしの友だち。大和とみさとのクラスが違うことは、事前に会ったときに聞いていた。

そもそも普通科だけでも1学年5クラスあるから、どちらとも同じクラスにならない可能性が高かったわけなんだけど。



無事に大和とは同じクラスになり、みさととはクラスが離れてしまった。

……ことを、みさとはどうも嘆いているらしい。



「ななせ〜っ……」



またもや抱きついてきて離れようとしない彼女に、ふっと小さく息をつく。

やわらかなパーマのかかった甘い赤茶の髪を撫でてあげたら、満足そうに目を細めた。



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