【完】こちら王宮学園ロイヤル部
先輩に手を引かれて、部屋を後にする。
絡めた指先。街に繰り出せば彩られたデコレーションに、ああそういえば今日イブなんだっけ、と、いまさらなことを思い出した。
「クリスマスイブなので、
お店しまっちゃうの早いですよ?」
「開いてなかったら、そのときはそのときだな」
「最終的にはルームサービスありますからね」
ふわふわする。
先輩と一緒にいられるから、浮かれてる。
「っていうか、受験勉強大丈夫なんですか?
もうすぐセンター試験ありますよね」
「お前を迎えに来ること以上に優先するもんなんかねえよ。
……手配すればいつでも帰れるけどな。あと数日一緒にいるか?」
ふふっと笑って、「はい」と言えば。
先輩が隠れるようにキスをくれて、頰が緩む。
「あ、プレゼント用意してませんよわたし。
まさかクリスマスに会うなんて思ってませんでしたから」
「俺もそれどころじゃなかったしな。
……まあ。色々と落ち着いたら、恋人らしいこともできるだろ」
「そうですね。でも。
先輩と今一緒にいられるだけで、わたしにとってはクリスマスプレゼントみたいなものですよ」
聖夜が起こした奇跡、なんてそんなありふれた言葉を並べたりはしない。
もし奇跡が起こっているのだとすれば、それは先輩が起こしてくれたものだ。
「いつみ先輩。……好きです」
ふわふわと浮き足立つような感覚とともに、ひらひら胸に募っていく感情。
願わくば。──どうか永遠を誓う相手が、彼でありますように。