【完】こちら王宮学園ロイヤル部



「そういえば南々瀬、お前引っ越したんだろ?

帰国してから親と一緒に住んでんのか?」



わたしに何があったのかは、全校生徒の中でもロイヤル部のみんなしか知らない。

だから通常通り行われた始業式のあと、不意にそう尋ねてきたのは莉央で。



「ううん、一緒じゃないの。

研究に専念できるように、いまはもう珠王の社員寮にお世話になってるみたい」



「……さみしくねえの?」



「15年無理な研究をしてきたから、また人を助ける手がかりになる研究をできるのがうれしいんだって。

すごくうれしそうな顔で言われたら、わたしだってダメとは言えないでしょ?」



年があけるすこし前に帰国して両親と再会したわたしは、案の定ふたりに対して泣きながら怒ってしまったけど。

ふたりは「ごめん」と謝って、強く抱きしめてくれた。



大好きだって言ってくれたから。

……ううん。15年の我慢だけでふたりがどれほどわたしに愛情を注いでくれているのかなんて、わかりきっていることだ。




だから、さみしくない。

研究に専念すると言っても、わたしの連絡には必ず出ると言ってくれたし、何かあればすぐに会いに来ると言ってくれた。



「じゃあ、また一人暮らしですか?」



「ううん。普通のマンションに一人暮らしは心配だからだめだって許してもらえなかったの」



「……? ならどこに住んでんの?」



ふわふわと、オレンジベージュの髪が揺れる。

しっかりしているお兄ちゃんなイメージがあるせいで、きょとんとしたその表情がめずらしい。



「マンションの、いつみ先輩の部屋」



わたしは王学の寮でもよかったんだけど。

先輩が、どうせあと1年で卒業するんだから一緒に住んでいればいいと言ってくれた。



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