【完】こちら王宮学園ロイヤル部
・to be continued ...
◆
季節が移り変わるのは早い。
それはもう、驚くほど、あっという間。
「……終わっちゃうの、ね」
金の箔押しがされた、C棟の黒扉。
何度も予算を使い間違えているとしか思えなかったそれは塗りつぶされ、上から『生徒会棟』と書かれたプレートが貼られていた。
せめての気持ちを込めて、塗りつぶされる前に写真にはおさめておいたけど。
あの金の箔押しがもう見られないのは、寂しい。
「ななせ。
そろそろ入らないと、まにあわないよ?」
たたたと近寄ってきたのはルアで。
あとで行くと告げたわたしが遅いから、呼びに来てくれたらしい。もうそんな時間かと、彼とドームへ向けて足を進める。
桜があの強く香って燻るような春を連れてくるのはまだ先だ。
……だけどきっと、すぐに満開になるんだろう。
わたしが帰国してからの2ヶ月は、本当に早かった。
山のような仕事をわたしたちがこなしている間に、先輩ふたりの試験も終了。
ふたりとも、無事に4月からは大学生だ。
合格が分かったあと、仕事を片付けたわたしたちはロイヤル部の授業免除権を最大限に利用して、1泊2日のプチ旅行に行った。
あらかじめ5人で計画していたサプライズでのお祝いも喜んでもらえたし。
旅行から帰ってきた後は本格的に引き継ぎの作業をして、今日はそう、卒業式だ。
1年生と2年生は、出席しないのだけれど。
卒業式のあとに、ラストステージという名目で、芸能科卒業生の最後のパフォーマンスが行われる。
それも芸能科がある王学ならではの行事で、在校生のほとんどがそれを見るために学校に集まる。
ラストステージが終われば、各自自分の親しかった先輩たちと別れを惜しむらしく。
芸能科の3年生だけはまだラストステージという見せ場が残っているけれど。
今日この学園に流れる雰囲気は、やっぱりどこかよそよそしくて寂しい。
夕帆先輩もいつみ先輩も、これから先会えないわけじゃない。
むしろいつでも会いに来ると言ってくれたし、何よりいつみ先輩とは一緒に住んでいる分、これからも毎日一緒なのだけれど。